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オムニヴォア

書くために読んだもの。読むために書いたもの。2016.10.2より。読書の記録を中心に、日々の潜考の記録。いつか自分の本を1冊でも出すのが夢です。オムニヴォア(Omnivore = 1.雑食(性)動物 2.知識欲旺盛な人)

JOJOのスタンド能力と「僕だけがいない街」のリバイバル(再上映)は対照的だ ~ 「荒木飛呂彦の漫画術」 / 荒木飛呂彦

作品への感想 読書

この記事では漫画「僕だけがいない街」のネタバレについて書いています。最終巻まで読み終えてから、この記事もお読み頂くことをおすすめします。

 

 

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

 

 いわゆる技術教本ではないので、それを期待しない方がいいです。反面、難しい概念やマニアックな説明はないので、一般のビジネスマンから創作に関わる人まで広く読める本です。筆者の1つのことに長年打ち込んできた真摯な心構えは、受験を控えた学生さんにもお勧めできそうです。最後の「黄金の道」のくだりはシビれました。 

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書) まっささんの感想 - 読書メーター

 

もうちょっと深堀る: 主人公が困難を打開するための決定打となる要素が、なんだかよくわからない条件のまま発動してはいけないと深く学ぶ

 本書では漫画の4大要素とは、「キャラクター」「世界観」「ストーリー」 「テーマ」であるとし、それぞれの要素についてどうあるべきかということを解説している。「キャラクター」と「世界観」については特に重要で、細かいところまでしっかり作り込まれていないといけませんよ、と語られている。そのノウハウについては、ここで語るというのも野暮というかマナー違反かと思うので書かないけれど、1つ強く印象に残ったのは「そのキャラクターや世界観で、ルールが破られたり辻褄の合わないことが起きてしまうと、読者は冷めてしまうものだ」と言及されている部分だ。
 

  僕が昔やっていた演劇の場合は、さらにその役をその役者が演じて違和感がないか(漫画では「絵」が役者に置き換わるだろうか)、むしろ役者が台本に付加価値を与えていることができているか(そういう関係となるようセッティングできているか)、という部分も稽古でチェックしながら進めていく。何度も同じシーンを練習しながら、シナリオやセリフに問題がないか確認して、違和感があれば都度修正していく。そうやって作り込んだものを、お客様にお出しする。

 
 そんなことを思い出しながら、作者の「企業秘密」を楽しく、そして自分が創作を行うための血と肉となるよう真剣にじっくり読み込んだ。
 
 さて、それで興が乗ったか、先日漫画をまとめて読んだ。その中でふと気になったことがあったので、ここに書いておく。
 

 

僕だけがいない街 コミック 1-8巻完結セット

僕だけがいない街 コミック 1-8巻完結セット

 

 

 「僕だけがいない街」の最終巻まで読み終えた。以降は、この記事を読んで下さっている人も同じところまで読んでいるという前提で書いていきますので、ネタバレが嫌な人はご注意下さい。

 
 犯人探しとドラマ部分はしっかりと風呂敷が畳まれた形で完結したけれど、後で色々思い返していると1つだけどうにも解せないことがあった。
 
本作のキモである、主人公が同じ時間を繰り返すリバイバル(再上映)について、結局はそれらしい説明がされなかった点である。
 
 「世界観」を考えればSFマニアを唸らせるようなギミックでなくとも良いとは思うが、それにしても「想いの強さが起こした奇跡」のようなものでいいから、理由を断定する描写が物語の中で欲しかった。「きっと○○だったんじゃないか」と主人公が考える描写はちらっとあったけれど、そうではなくて必要なのは「○○である」という断定だったと思う。
 
なぜならば、一応この話は犯人探しのミステリーであったし、主人公が未来に起こることがわかっているという点を武器にして犯人と戦うストーリーになっている以上、この最大のキモについては物語側で説明をして、それを基本ルールとしてお話を展開しなければ「何でもアリ」ということになって興ざめしてしまうだろう。というか、僕は軽くそんな感じになった。
 
 「荒木飛呂彦の漫画術」では、JOJOは人間賛歌がテーマであるから、人間自身が自分の知恵と勇気で困難を乗り越える物語でなければいけない。だから、突然空から神の贈り物が降ってくる、というようなピンチの克服は絶対に起きない。そこが破綻しては読者はついてこない。そういうことを作者自身の作品を例に出しながら語られていた。
 
なるほど、こういうことか、と僕は思った。
 
 「僕だけがいない街」におけるリバイバルは、JOJOで言うところのスタンド能力である。主人公が困難を打開するための決定打となる要素が、なんだかよくわからない条件のまま発動して、最後までそのことについて説明されなければ、主人公が悪に勝利したところでご都合主義以上のものにならない。
 
 妻にそのことを話して、「結局さ、この作品はまだ『稼げる作品』だからさ、スピンオフみたいな話始まって、そこでは『ついにリバイバルの謎が全て解明する!』とかやっちゃうんじゃないのかなー」とケラケラ笑った。
 
「いやー、年をとるって損なこともあるよねー。そうやって純粋に作品を楽しめなくなるんだよ」と、妻も笑った。
 
 まあ、僕としては妻とささいなことで笑い合う時間が持てただけでも「僕だけがいない街」を読んだ甲斐はあったわけだけど。
 
 
 
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荒木先生と「僕だけがいない街」と言えばこれですよねw