オムニヴォア

書くために読んだもの。読むために書いたもの。2016.10.2より。読書の記録を中心に、日々の潜考の記録。いつか自分の本を1冊でも出すのが夢です。オムニヴォア(Omnivore = 1.雑食(性)動物 2.知識欲旺盛な人)

愛してる。僕を必要としてくれる全ての人と仕事を 今年最後の読書は「Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選」

 年末に向けて仕事が大爆発。こうなるとわかっていたけど、連日23時から24時くらいまで働いて、次の日はできるだけ8時半には出社して、年末の休みも1日休日出勤してようやく仕事が納まった。たった6日間ではあるけど、濃い業務が続いたのでクタクタになってしまった。ブログも小説も1行も書けなかった。寝ている間も仕事のことが頭から離れなかったし、離れるわけにもいかなかった。とても集中力が要求される仕事なので、頭をスイッチしたくなかった。能動的にワーカホリック状態をキープしていた。

  それでようやく仕事は納まった。まだ寝不足で体が重いけど、ここで休みたくなかった。昨晩のささやかな打ち上げで居酒屋に入った瞬間から「ああようやく終わったんだ」という感慨と共に、書きたい!書きたい!という気持ちが溢れて止められなくなった。ここでこれを逃すと、また仕事に流されて「1冊本を出す」という夢がどこかに消えてしまうのではないかという危機感もあった。だから、僕は朝まで飲んで帰宅して、数時間だけ仮眠してこの記事を書いている。顔も洗わずに車に乗って近所のファミレスにノートパソコンを持ち込んで、だーっとこれを書き出している。この時間のために働いているのだ。生活費のための義務を果たして、正真正銘好きに使っていいこの時間を、無駄にするわけにはいかない。

 先日、職場でミスばかりする派遣社員の面談を行った。リーダーとして上司に彼女の勤務態度について報告する一方で、勤務態度を理由に契約を打ち切るのを少し待って欲しいとお願いをしたのだ。彼女は他に夢を持っていて、その夢のために週の勤務日を1日減らしている。僕は言った。

「本来、自分がやりたいこととは違うことをやっているわけだから、サイズの合わない靴を履いているようなやりにくさを感じていると思う。俺だって20代の頃から他にやりたいことがあって、でも生活のためにアルバイトを続けてきたような人間だから、気持ちわかるよ。でもさ、あなただってここでもらえる給料がすごく大事でしょ。もしここを辞めさせられたら、たちまち生活が立ち行かなくなって、夢を追うどころじゃなくなるよ。ってことは、なんとかやってくしかないんだよ。こっちはこっちで」

 20代の頃、演劇青年だった僕は、毎日生活が困窮していた。考えてみれば、子供もいなかったあの頃、自由になるお金は今よりも大分あったけど、その分演劇という夢に突っ込んだ額も大きかった。電気や携帯電話が止められることだってしょっちゅうだった。今は、家族を養っている身だから、そんな無茶はできない。給料は全部嫁さんに預けて、僕は必要最低限の額だけ財布に入れている。幸い、モノ書きはせいぜいこうして外で書く時のコーヒー代くらいで済むから、数千円しか財布に入ってない時だって特段ストレスはない。演劇の稽古場や公演を行う劇場の使用料を払う必要もないし、チラシやチケットを印刷するお金を工面する必要もない。気楽なものだ。

あの頃のギリギリの生活をしながら頑張って夢を追っていた生活も悪くはないが、生活の心配をしなくても良い状況を作ってから、残った限られた時間に集中して夢を追うのも、これはこれで悪くはないもんだと思っている。

 仕事はとても大事。例え、それが本当にやりたいことじゃなくたって、サイズの合わない靴に中敷きを突っ込んで無理やり履きつぶすようにがんばってやっていくしかない。

 僕は元来ダメな人間だ。今だって、深刻な問題を抱えている。それは自分の小説用にストックしてあるネタだからここでは書かないけど、とてもひどい笑えないくずっぷり発揮している。後にも先にも進めず、その場で息継ぎだけしようと水面に顔だけ出しているような問題を抱えている。

 だから、僕は仕事や夢を追うことくらいは一生懸命やっている。これくらい死ぬ気で集中してベストを尽くしていかないと、せめて魂を浄化していかないと、自分は本当にダメになってしまう。本当に、そう思う。

 

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)

 

 

 今年最後の読書は「Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選」だった。村上春樹を3冊連続で読んだ後、緩やかに他の作家に移行するために、村上春樹が繰り返し語っていたレイモンド・カーヴァーの本を読んでみたのだ。偶然なのか、自分で引き寄せたのか、仕事でくたくたになっている時に読む本としては良い一冊だった。「大聖堂」が特に良かった。

 が、「1冊本を出す」という夢を持っている自分には、本当に心に刺さったのは巻末の作者の人生を年表にした部分だった。一人のなんでもない人が、どうやって作家になって、そして亡くなっていったのか。本書に収められているお父さんについて書いたエッセイと合わせて読むとしんみりできる。僕も今年、父を亡くした。

 自分はダメな人間だ。疑いようもない。でもだからこそ、自分にできることで且つ世の中の誰かのためになりそうなことが1つでもあるならば、それだけは、せめてそれだけには、誠意を尽くしたい。そんなことそう多くはない。僕を必要としてくれるあの職場と、僕が必要なだけ「善きもの」を与えてくれるたくさんの書物を、来年も大事にしていきたい。そこだけブレなければ、そうそう悪いことにはならないと信じて。

 愛してる。僕を必要としてくれる全ての人と仕事を。僕は自分で自分を愛してやることはなかなかできないけど(努力はしている)、僕に関わってくれる小さなささやなか世界は愛していこうと、感謝をできるだけ具体的に形にしていこうと、来年もこれからも、せめてこれだけは頑張って続けるよ。そうそう悪いことにはならないはず、と信じて。