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オムニヴォア

書くために読んだもの。読むために書いたもの。2016.10.2より。読書の記録を中心に、日々の潜考の記録。いつか自分の本を1冊でも出すのが夢です。オムニヴォア(Omnivore = 1.雑食(性)動物 2.知識欲旺盛な人)

【ネタバレなし】Huluでもゲーム・オブ・スローンズのシーズン6が配信! その前に改めてS1~S5までの面白さを整理する

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 10/25(火)からHuluでもゲーム・オブ・スローンズのシーズン6が配信されることになったとのこと。

僕は先月始めくらいに妻から勧められ、約1ヶ月かけてシーズン1からシーズン5まで駆け抜けた。

海外ドラマ熱は少し冷めていたんだけど、ゲーム・オブ・スローンズは食い入るように夢中で観てしまった。


 何が面白かったのか。シーズン6の配信が始まる前にシーズン1から5を振り返りつつ整理してみようと思う。

本記事おいては、ネタバレは一切しない方針でございます。ご安心ください。



1. 軍記物かと思いきや、そうでもない  

 シーズン1の第1話からシーズン5の最終話まで、一貫してこの感想を持ち続けた。

パッと見はそうではない。ロード・オブ・ザ・リングみたいな架空の王国が舞台で、誰が世界の覇権を握るのかって話だよー。

と、とりあえず説明はできるのだけど、実際はそんなツイスト不足な構成になってない。

いわゆる三国志NHK大河ドラマのような軍記物ではあるのだけど、ゲーム・オブ・スローンズには大きな違いがある。

軍記物は基本的に出てくる人々がみな、各々の立場と理由で「天下統一したい!」と願っているものだけど、ゲーム・オブ・スローンズは、「天下統一したい!」と思っている人も中にはいる、くらいの温度感だ。

すでにゲーム・オブ・スローンズを視聴した人は思い返してみてほしい。あのドラマの登場人物の中で、心から「鉄の玉座に座りたい」と願っている人間が何人いるだろう?

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2. 群像劇の一部として「覇権争い」も絡んでくる、程度

 ゲーム・オブ・スローンズは、複数の主人公で成り立っている群像劇だ。あっちの国ではあんな人が、こっちの国ではこんな人がいて、あっちの国とこっちの国はもう何世代も世界の覇権を争っている。どちらかが正義で、どちらかが悪というわけでもなく、お互い家を守るために必死なだけだったり。

普通の軍記物であれば、そういった中心となる覇権争いを幹として、そこに関わる登場人物を枝葉のように広げていって、スケール感を拡張しながら1本の大木かのように物語を表現するものだと思うのだけど、そういう物語を楽しもうと視聴者がゆっくり腰を下ろそうとする瞬間に、その椅子を引いて尻もちさせようとする。

 まず、シーズン1の第1話冒頭からして、椅子を引く気マンマンなのだ。

ネタバレを避けるために詳細は書かないが、なんの前知識もなしにシーズン1の第1話の冒頭だけ観せれば、おそらくゲーム・オブ・スローンズを一見軍記物として観たくなる、という僕のここまでの話に、こいつは何言ってるんだろう? と違和感しか覚えないだろう。

それくらい、違うジャンルのフォーマットの映像を観させられる。

ほどなく、軍記物(っぽい)テイストの話が始まるわけだけど、ここですでに僕は「んー? んんん? なんじゃこりゃ?」と混乱を覚えた。

 いや、実はゆさぶりは、本編が始まる前のタイトルムービーから始まってる。約1分半のタイトルムービーでは、これは架空の王国の話ですよー。だけどこんなに世界は広いんですよー。設定作り込んでますよー。壮大な話が始まりますよーと煽ってくる。

 

何回観てもすばらしい映像ですね。

しかし、このオープニングからして、本編が始まると撹乱用ジャマーとして効いてくる。


 話を戻すと、シーズン1の第1話は、このオープニングから想像される物語のジャンルとは程遠いエピソードから始まる。そして次に始まるシーンは、ようやく物語の主役たちが出揃ったのかと思いきや、10分もすると、全く別の場所の別の人達の話が始まる。

 こんな具合に、別の主人公達の、別のジャンルの物語が、脈略もはっきりしないまま、ふわふわ自由に展開されていく。戦争もあれば、恋愛もあれば、大いなる旅路のロードムービーもあれば、あげく犯人探しのミステリすら始まってしまう。

第1話では、結局どことどこの勢力が覇権を争うことになるのかも、わかるようなわからないような、という感じで終わる。


3. 結果、このドラマはどこに向かって走っているのかもよくわからなくなってくる

 軍記物であれば最終的な勝者は誰なのか、恋愛物であればその恋は実るのか、ロードムービーであれば目的地に無事たどり着けるのか、ミステリであれば犯人は誰なのか、というように、物語は作者と視聴者が終着点をお約束を共有しながら読み進めていくものだけど、ゲーム・オブ・スローンズは、この終着点の共有を意図的に放棄している。

 ジャンルごとのフォーマットをベースに、視聴者が約束された終着点に落ち着くことを許さない。 

ことごとくお約束を破ってくる。え? ここでこの人殺す?とか、うわー、こいつにこのパートの主役やらせるのかよーとか、海外ドラマの視聴経験が多い人ほど、困惑するようなどんでん返しを仕掛けてくる。

騎士同士の決闘の最中に、いきなり悪魔が出てきて剣で戦う二人を魔法で焼き殺してしまったり、ミステリのラストシーンで犯人当てが始まるかと思えば、「これ戦争ですし」と無慈悲に兵士が探偵を暴力で抑えつけたりする。例えるならそういうお約束破りを要所要所でかましてくる。(これはあくまで例えです。そういうシーンが実際にあるわけではないのでご安心を)

お約束をあまり知らなければ、ただの目まぐるしいドラマだけど、物語のセオリーをたくさん知っている人ならば、さらにその奥の嫌らしい足払いのごとき一撃に、受身も取れずに横転して腰を強打することだろう。

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4. 通殺しの罠をあちらこちらに

 紋切り型の展開や設定に飽きてしまった大人のためにこそ、このドラマは作られている。お約束を知っていれば知っているほど、鮮やかな裏切りに舌を巻く。そういうドラマであるように思う。

 このドラマの巧妙なところは、それぞれのパートに多様なフォーマットを取り込むことで、いろいろな属性の視聴者を楽しませようと、一見サービス精神旺盛そうな甘い顔を見せかけておいて、実はお互いのフォーマットの掟破りを正当化するために、別々のパートで異なるテイストの話を展開させているんじゃないかと思わせるところだ。

だが、実にその騙しっぷりが見事で、シーズン1を観終わる頃には、次はどんな罠で殺してくれるのか楽しみになってしまうから始末に負えない。


5. このドラマに限っては、収拾がついていない、は褒め言葉になってしまうだろう

 普通は風呂敷を広げすぎて畳めなくなってしまう状況は、批判のネタになってしまうだろうけど、このドラマはそこをうまく逆手に取れるように計算されている。

いつでも「世界の覇権を握るのは誰か」という物語の幹の部分に帰れるようにもしてある。

多少お遊びが過ぎても、ではその「世界」とは何か、何を持って「覇権を握ったことになるのか」を定義し直せば、いつだって本流に帰ってこられるようにしてある。

 あのオープニングで表現しているように、箱庭を広大に且つ頑丈に作り込んであり、実のところ、やはりこのドラマは王道なのだ。

ただその王が通る道の幅が、これまでの軍記物とは比較にならないほど広く、そして適用される物理法則がデタラメに自由というだけで、ずーっと上から猛禽類の目で俯瞰すれば、王道は王道だという安心感も担保されている。だから、途中の過程で収拾がついてない、という印象になれば、それは作り手達への賛辞にもなる。

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6. 最後に蛇足な例え話

 この記事は海外ドラマに興味がある人が読むであろう物なので、あえてここまで引っ込めていたのだけど、ゲーマーでもある僕はこうも感じたという話。

 ようするに、オープンワールドのゲームに類似しているわけですよ。その手法も魅力も。

広大な箱庭の中に、軸となる太いメインクエストを構築し、その道草要素として膨大な数のサブクエストを配置する。違いは、遊ぶ順番(=視聴する順番)を選択できないという部分だけで、このドラマは優れたオープンワールドのゲームをプレイしている時の楽しさと似ている。

ビジュアルと世界観の近似感からも、例えば「ウィッチャー」シリーズと比較するのが面白いだろうか。


GOS_1 (2) ウィッチャー (2)

…うん。


 では、今回はこの辺りで。

10月はもう1つの大作、ウォーキング・デッドのシーズン7も来るので、今年の秋の夜長は退屈しそうにないね!!


もうゲーム・オブ・スローンズはシーズン6のBDボックスも出ているんですね。Huluで観てる途中で続きが気になって、こっちを先に買ってしまいそうw